クラスメート2 転校生
転校生 編
「乱ちゃーん」
関西なまりの、溌剌とした声にあたしは振り返る。
振り返った理由は、呼びかけられたからじゃない。
声の主じゃなくて、声をかけられた対象のせい。
そこに、あいつがいた。
あいつ──、早乙女乱馬。
いつもと変わらない、飄々とした態度のおさげ髪の男子。
声をかけたのは、彼の幼馴染みらしい転校生の女の子。
駆け寄ったその女の子──久遠寺右京もまた一風変わった子で。
女の子だというのに、以前の学校で来ていたらしい、少し紺色がかった学ランを着用していて。
それが結構似合っている、活発で朗らかな、人当たりのいい子だ。
荒っぽいところのある早乙女乱馬を、ちょっと苦手がっている女の子が多い中、
幼馴染みという気安さなのか、右京は気軽に乱馬に声をかけ、話をしている。
ひどく楽しそうに、彼もまた言葉を返している。
ついこの間まで、あんな風に早乙女乱馬に対して声をかける女の子は、あたし一人だった。
ねえ、あかね。恐くないの?
そう同じ風紀委員の子にも訊かれたぐらいだったのに……。
弾けるような笑い声。
居心地が悪くなって、覗き見をしているような気がして。
スカートを翻して、あたしは足早にその場を去った。
背中に、楽しげな明るい笑い声が突き刺さる。
なにを気にする必要があるのよ──。
長い髪は、まるでその場にあたしを引き止めたがっているかのように、
奇妙に重く感じた。