クラスメート3 一枚の写真
一枚の写真 編




 シャッター音が聞こえて、立ち止まる。
 もう、まったく。
「いいかげんにしてよね、おねえちゃん」
 うんざりした顔で振り向くと、そこでまたすかさずフラッシュ。少し目を瞬かせる間に、嬉しそうな声がした。
「その顔、いただき」
「人のこと、なんだと思ってるのよっ」
「いいじゃない、減るもんじゃなし」
「そういう問題じゃない!」

 なんてことのないように笑うなびきおねえちゃんの手には、愛用のカメラ。油断も隙もあったもんじゃない。
 知らない間に勝手に写真を撮って、売りさばいてる。見知らぬ人があたしの写真を持ってるだなんて、恐いじゃないの!
 知ってる人が持ってるのも、ちょっと……だけど。
 おねえちゃんのクラスメートにして生徒会長の九能先輩のことを思うと、うんざりする。売らないで──なんて言ったところで、おねえちゃんが聞いてくれるわけもないし……。
「そんなに怒らなくてもいいじゃない、あかね」
 そう言うと、思いついたようにしてポケットを探って、一枚の写真を取り出した。
「じゃあ、たまには還元してあげるわ。これ、タダであげる」
 押し付けるようにして写真を握らせると、鼻歌まじりに歩いていってしまった。
 タダであげるだなんて、どういう風の吹き回しよ。それに自分で自分の写真もらったって仕方な──


「…………なによ、これ……」


 手元に落とした視線が、写真の人物とかちあう。
 写真を「捨てる」だなんて、悪いって思うから。
 だから、持っておく。
 それだけよ。


 カバンの奥。
 うっかり落としてしまわないような場所に、
 早乙女乱馬が映っている写真を仕舞いこんだ。

 あとでおねえちゃんにつき返してやるんだからっ!