10 : 涼やかに光降る、秋の夜空の月の下
10 : 涼やかに光降る、秋の夜空の月の下
あんなにも寝苦しかった日々が、滑稽に感じられるぐらいに、涼しくなった。
窓を開けていると、虫の音が聞こえることにふと気がついた。
不思議だなあ。
いつからだろう。
不思議だなあ。
どうしてだろう。
寝静まった町は、一層涼やかさを増したように思えてくる。
暗闇に浮かぶ月。
真夜中なのに、ほんのりと明るい。
部屋に差しこむ月明かり。
真後ろにあたしの影を作り出す。
黒くて長い、影法師。
まだまだ長い、
一人の夜。