03 : レンズ越しにぶつかった視線に、どうしようもなく惹き付けられた。
03 : レンズ越しにぶつかった視線に、どうしようもなく惹き付けられた。


 ありえないことだと思った。
 彼女と目が合うだなんて。

 ああ、ありえない。
 こちらを認めて、彼女が笑いかけるだなんて。

 ますますもって、ありえない。
 微笑を浮かべた彼女が、自分に向かって歩いてくるだなんて。

 ぷっくりとした、艶やかな唇が動く。
 名前を呼ぶ。
 自分の名前を形作る……


「ムース、私、乱馬とデートの約束があるね。代わりに出前に行くよろし」

 夢は夢。
 現実って、こんなもの。