10 : 泣き縋る事しか知らなかったあの頃と、何が違うかと問われれば、返す言葉は何も無い。
10 : 泣き縋る事しか知らなかったあの頃と、何が違うかと問われれば、返す言葉は何も無い。


 いっぱい泣いて、
 いっぱい笑った。
 いっぱい怒って、
 いっぱい泣いた。

 夏に怒って、
 秋に落ち込む。
 冬に泣いて、
 春に笑う。

 いくつもの季節を数えて、もう何度目かの春が巡り来るけれど、
 あの頃となにが違うかと問われても、答えはよくわからない。

 心と距離、気持ちと間隔。
 遠くにあって近くにあるもの。
 そこにあるもの、消えてしまうもの。
 変わらないもの、変わりゆくもの。
 出会って何年。
 過ごして何年。

 だけど、答えの出ない物語。
 この先何年も、ずっとずっと続く物語。

 特別な言葉なんていらないから、
 ずっと、そこにあればいいと、今も願う。