09 : ほんの少しの願いがあれば、それだけで、世界なんていくらでも変えられる。
09 : ほんの少しの願いがあれば、それだけで、世界なんていくらでも変えられる。


 例えば、あの店で見たワンピースが欲しいとか。
 雑貨屋さんで見かけた素敵な写真立てが欲しいとか。
 小さな望みはいくつもある。

 雑誌に載っていた喫茶店。
 クラスで噂の占い屋さん。
 最近出来たショッピングモール。
 赤と黄色のレンガ通り。
 両脇には、イチョウと街灯が交互に並んでる。
 ちょっとレトロな雰囲気で、夕方になって明かりが灯れば、別の時代にタイムトリップ。
 ハーフコートと、底の厚いブーツを履いて。
 枯葉の舞う中を歩いて、お買い物。

 小さな憧れ。
 ひそかな夢。

 だけど現実は、いつもの通り道で、片手には夕飯の材料。
 近所だから部屋着に毛の生えた程度の服装で、サンダル履き。
 ロマンチックには程遠い。
 だけど、もう片方の手が温かければ、
 いつもの道も、昨日と違った道になる。
 隣を歩く誰かがいれば、
 場所なんて関係ないぐらい、世界は色を変えてしまう。
 単純だけど、素敵な魔法が、あたしにはある。