風林火山と水の音
風林火山と水の音
序幕
「なんでもっと気合い入れて起こさねーんだよっ」
「起こしてもらってる身分で文句言わないでよね」
喧々轟々。
罵りあいをしながらもその足並みは、乱れなく通い慣れた道筋を辿る。空色のスカートを靡かせながら走る少女のちょうど肩の位置。川沿いのフェンスの上を危なげなく駆ける少年の頭の後ろで、おさげ髪が跳ねる。
「もう、遅刻したら乱馬のせいなんだからね!」
非難めいた口調で言葉を投げつけられた地上約1.5メートルの少年は、むっとした顔を作ると斜め下に向けて口を尖らせた。
「けっ、それはこっちのセリフだぜ」
屋根伝いに直線距離を走ればそう遠くはない。事実、それで遅刻を免れたことだって多々あるのだ。
だが、この少女がいるとそのショートカットコースは使えない。自分と同じ事を彼女に求めるのは無謀というものだ。だからこうして走っているというのに……
(ったく、誰のためだと思ってんだよ)
自分が寝坊さえしなければ全力疾走もしなくて済んだことを一ミリたりとも考えずに走り抜ける通学路。
それは、いつもとたいして変わらない朝の風景だった。
1 朝の調べは微風の如し
「HAHAHAHAHA」
朝っぱらからテンションも高く響き渡る笑い声。季節感もなく、一年中が常夏・アロハシャツな場違い男が一人、校門を通る生徒の間を走っている。
朝の光を反射するサングラスが、別の輝きを帯びて煌めいた。
「へへっ、どうだ、間に合ったじゃねえか」
「威張らないでよ、そんなことで……」
荒い息をつく少女とどこか得意気な少年に目を転じ、彼は勢いよく走り寄る。
「一年F組、早乙女乱馬ー」
「朝っぱらからうっとーしいなてめーは」
バリカンを避け、クロスカウンターであてた拳をさらに相手の頬にねじ込みながら、少年──早乙女乱馬は唸った。「なんの用でい」
「実は大変なのでーす」
「あー、そうかい」
それで終わりとばかりに昇降口へ向かう乱馬の背に、涙混じりの訴え声が追いかけてきた。
「OH! 困っている人を見捨てるだなーんて、ミーは、そんな生徒に育てた覚えはありませーん」
「育てられた覚えもねえよ」
「早乙女乱馬!」
「あんだよ」
「ユーの、大事なフィアンセが、どうなってもいーのですかー?」
「ああ?」
そこで振り向いた乱馬が見たものは、腕を掴まれもがいている少女の姿。
「あかね!」
「ミスあかね天道の命が惜しくば──」
「なにすんのよ!」
「OUCH!」
天道あかねの蹴りが、校長の背中に突き刺さった。
「で、一体なんなんだ」
「実は……」
ぐるりと生徒に取り囲まれ、校長はその場に座り込んでいる。頭のヤシの木が心なしか垂れて元気がないのは、悩みのせいか。着衣の乱れはあかねの蹴りの名残であるが──
「実は、タッチィのことなのでーす」
「って……」
「九能先輩がどうかしたんですか?」
「タッチィの様子が、変なのでーす」
「変……?」
「九能先輩が?」
「いつものことだが……」
ざわざわと生徒達がどよめく。その人垣を割るように駆けて来るは一人の男──
「せいっ!」
振り下ろされた木刀が地面を打つ。寸でのところでそれを避けた乱馬が木刀の持ち主を一睨みするが、相手は朗らかな笑顔で乱馬の隣を見ると、その手を取る。
「おお、天道あかね。爽やかな朝の一時を共に過ごしたいと願う君の気持ち、痛いほどよくわかるぞ」
その顔に二人分の拳が入った。
「なにをする、早乙女乱馬」
「それはこっちのセリフだ」
「九能先輩、なにかあったんじゃなかったんですか?」
真顔で怒っていた九能帯刀であったが、あかねの問いかけに顔を輝かせて再び手を握った。
「そんなにまでもぼくのことを愛してくれるのだな、天道あかね」
「違います」
「タッチィ!」
乱馬が怒りの言葉を発するより前に、校長が立ち上がり声を上げた。
「ミーは、とても心配してたでーす」
「とりゃー!」
手を広げる校長に対して、息子は木刀を突き出した。
「OH! タッチィ、なにをしますか」
「ええい、寄るな。この変態校長が!」
「親であるこのミーの愛情が、タッチィにはわからないのでーすか」
「貴様などと、親でも子でもないわ!」
バリカンと、木刀とが、空を切る。一番たまらないのはその間にいる早乙女乱馬である。
目の前を走るバリカンを半身下がって避け、その反対から突き出される木刀を頭を抱えてしゃがんで躱す。下からえぐるように来るバリカンを飛び越え、着地と同時に走る木刀を背中すれすれで避ける。
頭を左右に振り、前と後ろからやって来るバリカンと木刀を、耳の皮一枚残して避けるのもそろそろ限界点だった。
「ミーは哀しいでーす」
「貴様の哀しみなど、知ったことではないわー」
「てめーら、いい加減にしやがれ」
怒声と共に放った蹴りと拳は、ひとまず喧嘩を終結させた。
2 秘めた理は密林の如し
「校長先生と九能先輩、なにがあったのかしら?」
「知るかよ、関わりたくもねーや」
「それは、そうだけど……」
授業前の教室。朝の騒ぎのせいで機嫌の悪そうな乱馬に、あかねは言葉を止める。
別に心配するわけではないけれど──ついでにいえばあの程度の騒ぎは珍しくもなんともないが──、それでもあの校長にしては元気がなかったのではないかと、そう思うのだ。
(家族のことに口出しなんて、しない方がいいよね……)
小さく息を吐くと、あかねは席に着いた。
所変わってこちらは2年の教室。
顔にあざをつけたままの九能の席に、ゆっくりと近づいたのは天道なびき。
「おはよう、九能ちゃん。相変わらず変な顔ね」
「天道なびき、喧嘩を売っているのか」
「そんなわけないでしょ。売るのは写真と情報よ」
妹と義弟──いや、この場合は義妹か。
とにかく彼女にとって二人は金の成る木であったし、九能帯刀はお金をくれる人であった。故に彼女は彼に尋ねたのである。
「ねえ九能ちゃん、なにかあったの?」
「マイ・ステューデントの皆さんに、哀しいお知らせがありまーす」
わざとらしい、お涙頂戴口調で校内放送が聞こえたのは2時間目も終わった頃だった。抜き打ち小テストに死んでいた生徒達は、虚ろな瞳で顔を机から上げてスピーカーを眺めやる。
また何を言い出すつもりであろうか。新しい校則か、嫌がらせか。
どっちにしてもうっとうしいことこの上ない声に、皆一様に疲れた顔だ。
「実は、ミーは、再び、ハワイへ行くこととなりましたー」
聞こえた声に、校舎内は、しん、と静まりかえる。
今、なんといった?
「……校長が、いなくなる?」
「ハワイに帰るのか!」
「これで学校は無罪放免だ!」
「あのうっとうしい顔を見なくて済むのね」
ざわざわと、次第に声が高まっていく。合わせる顔は蒸気し、室内は笑顔が洩れる者に溢れていく。一丸となって万歳三唱を唱えていた時に、未だマイクが入っていたらしいスピーカーからは、別の声が割り込んできた。ハウリングを起こすくらいの怒鳴り声──
「貴様、この九能帯刀に背を向けてまた逃げ出すつもりか!」
「タッチィ、それは誤解でーす」
「ええい、今その口で言ったではないか」
「ノープロブレム、問題ありませーん。タッチィもコッチィも、ミーと共に参りまーす」
沈黙が訪れた。
さっきとは比べ物にならないほどの静寂だった。
「──九能先輩が、転校?」
思えば、九能帯刀という人物は、この学校において知らない者はいないほどの有名な変態であった。
自称、風林館高校の蒼い雷。
その男が風林館高校を去る──
「静かになって、いーんじゃねえのか?」
「うん、でも……」
「あんだよ、おめー九能がいなくなるのがそんなにヤなのかよ」
浮かない顔のあかねに、乱馬はむっとした顔。
毎日毎日「天道あかねー」と九能があかねに抱きつき手を握り顔を寄せるたびに、心中穏やかではない。殴って蹴るだけではすっきりしない。本気で叩きのめして手も足も出ないくらいにしてやろうかと思うぐらい、開けっぴろげな愛情を振りまいてくる。
愛情表現が出来るというのは決して悪いことではないのであろうが、相手の意思を無視した愛情は、ただの押し付けにすぎない。
やるのは勝手だが、あかねを相手にするのはやめて欲しい。
常々そう思う。
そもそも、一番強い者が天道あかねと交際する資格を得るのだと豪語していたのは本人ではなかったか。
勝負して勝ったのは自分だ。
第一、もう勝負以前の問題だ。
天道あかねの許婚は早乙女乱馬。
今では誰もが認めている事実に反発し続けている──そんな奴のことを心配するのか。
「そういうわけじゃないけど、でも、納得してないってかんじだったじゃない」
「まあな」
あの後、スピーカーからは「そのようなこと、ぼくは断じて認めんぞ」と、少し動揺したような声が聞こえていた。争う物音がして、マイクは切れた。だからその後でどういった話がなされたのかは知らないけれど、解決したようには感じられない。
「教えてあげましょうか」
「なびき」
「おねーちゃん」
ふらりと現れた天道なびきは、そう言って笑みを浮かべた。
3 熱き御心は業火の如し
「九能センパーイ」
「おお、おさげの女ではないか!」
「センパイ、転校しちゃうってほんとですかあ?」
ぶりっこポーズで問いかけてくるおさげの女に、九能帯刀は瞳をキラキラと感激の涙を流す。
「おさげの女、そんなにまでもぼくのことを思ってくれていたとは……!」
「え……!?」
微妙に引きつった顔で後退するおさげの女に、ずずいと寄ってくる九能。
「おう、乱馬ではないか。このブラジャー、着けてみせちくり」
「じじいっ」
ぎゅるっと、九能の後頭部に着地した八宝斎が、背中に抱えた風呂敷から取り出だした下着を片手にしている。その後方から集団で駆けてきた女生徒達を見やると「プレゼントじゃ」と一枚ひらりと浮かせ、ひょいと逃げ去った。ふわりふわりと舞った下着はそのまま九能の頭に降り、乱馬の前で女生徒の袋叩きに合いはじめる。
土埃にまみれる袴姿を見下ろしながら、乱馬は呟いた。
「とりあえず。九能帯刀召し取ったり」
「ええい、何の真似だ!」
縄でぐるぐる巻きになった九能を、生徒達が取り囲んでいる。
「九能帯刀にこのような仕打ちをするとは、どういうつもりだ」
「まあまあ先輩、落ち着いて」
「お茶でも飲みますか?」
猫撫で声で口々に声をかける中、一歩離れた場所で壁を背になびきがその様子を観察している。
「それで、どうするの? おねーちゃん」
「そうねえ──」
妹に問いかけられ、なびきは虚空を仰ぐ。
「あかねが九能ちゃんとデートでもすれば、喜んで言うこと聞きそうだけど……」
やかんを手に、頭から湯気を出す早乙女乱馬の無言の圧力を感じ、肩を竦める。
「ま、それは無理でしょうね。となれば相手は乱馬くんってことになるけど」
「冗談じゃねえ。なんで九能なんかとデートしなきゃなんねーんだよ」
「あかねと代わってもらう?」
もっと冗談じゃねえ。あかねにんなことさせるぐれーならおれがやった方がまだマシだ──とは口に出して言えず、声が喉で詰まった。斜め下からあかねの視線を感じて、憮然と口を開いた。
「九能に校長を説得させるように仕向けるだなんて、あかねみてーな鈍い女にそんな真似できるわけねーだろ」
「……もっと素直に言えばいーのに、まったくしょうがないわね」
消火器を頭に減り込ませて廊下に沈んだ乱馬を見下ろしながら、なびきはぼそりと呟いた。
どうやら校長は学校を止めて、ハワイに移住する気らしい。
校長が、九能が、去るのは構わない。しかし、学校がなくなってしまってはどうにもしようがないではないか! 子供をないがしろにしていたという負い目がある(らしい)校長は、タッチィ(帯刀)コッチィ(小太刀)を誘って、楽しい家族生活を送りたいとかなんとか。
唐突な家庭の事情はともかく、生徒にしてはたまらない。教職員も同じである。
考えを変えさせるためには、やはり子供からお願いしてもらうほかないだろう。
そんなわけで「行かないで、九能センパイ」計画がスタートしたのである。
が――
「情けないわねえ」
「やかましい!」
ぜーぜー息をつく乱馬を呆れ顔で見るなびきとあかね。
「ねえ、九能センパ〜イ、あたしぃ、お願いがあるのぉ」と、寄っていっては「その気持ちしかと受け取ったぞ」と唇が寄ってきて殴り飛ばし、「センパイ、お別れなんてあたし哀しい」と、よよよと泣いてみせれば「ぼくと結ばれて、二人で楽園を築こう」と抱きついてきて蹴り飛ばす。
五回弱の計画はすべて破綻したのである。
「いまひとつつめが甘いのよね、乱馬くんって」
この際、あたしも一緒に連れていってくらい言ってみたら? と、無責任にアドバイスをするなびきに、あかねが言った。
「そういえば、校長先生はどこに行ったのかしら?」
「そうだな、肝心の校長がいないことには話にならないな」
「でも、どこにいるんだ?」
「校長室!」
生徒一同は走った。
「こらあー。廊下は走っちゃいけませーん」とどたばた走るひな子先生を追い抜かし、皆は走った。
どばん、と開いた校長室の中では、旅支度を整えた姿。カバンの頭からウクレレが覗いている。
「OH! お見送りに来てくれるとは、心優しい生徒で、ミーは感激でーす」
「違ーう」
「学校やめるなんて、考え直して下さい、校長先生」
「しかし、ミーは、タッチィのためを思って──」
「九能先輩だって、そんな風に思ってないですよ」
口々に言い寄ってくる生徒達。その人垣を割って、九能がやって来た。
「この九能帯刀、他人の力なぞ借りなくとも、抵抗してみせようぞ」
「タッチィ……」
「表へ出ろ、変態校長が」
4 彼の人の背は高山の如し
「手加減はせんぞ、校長」
「わかりました。受けて立ちます、タッチィ」
ひゅう、と風が走る。
校庭の砂をはらんで抜ける風は、土の上で小さな渦を巻く。誰かが捨てたらしい丸まったノートの切れ端が、からからと風に流されていった。
いつになく緊張感のある二人。
校庭をぐるりと囲み、生徒達は各々、好きな場所に陣取って観戦体勢であった。
右京の焼くお好み焼きと、購買部の売り子がそこかしこを巡る。
「乱馬……」
少し不安げな声色で服を掴むあかねを、背中で庇うように乱馬は一歩前に出る。
女の身体では、あかね自身との身長差など無いに等しいけれど、それでもこういう時は少しも小さく見えない。男の姿である時となんら変わりないくらいに大きな背中に感じてしまうから不思議だな、とそう思った。
もう一度、確かめるようにぎゅっと掴んでから、校庭の中心に目を向けた。
たくさんの瞳が集まる中、まず最初に動いたのは校長の方だった。
サンダル履きとは思えない動きで間を詰める。突き出したバリカンの刃が、九能の袴をわずかに切り裂いた。
九能は左に避け、回り込むようにして校長の右側に寄ったと同時に足払いをかける。しかし、相手はその足を跳躍して避けた。さほど驚きもせず木刀を左から払い上げ、そして上段から振り下ろす。
校長は両手に持ったバリカンを交差し、その一撃を受止め、両者は再び間合いを取った。
「腕は衰えてはおらんようだ」
「タッチィこそ、腕をあげましたねー」
「だが、次はそうはいかんぞ」
唸り声とともに両者、再び刃を重ねる。
行われている戦いはそれなりに緊迫しているが、戦士がアロハシャツ・バリカンと剣道部員では、どうにも違和感を拭えないところではある。
「ええい、ちょこまこと逃げおって。貴様はいつもそうなのだ!」
「逃げる、違いまーす。距離を置くのも兵法のひとつなのでーす」
「おのれ、馬鹿にしおって──っ」
頭上が陰った。
空を仰ぐ。
いつの間にか風に誘われた黒雲が、一面を覆っている。
曇天が、にわかに光った。
今にも泣き出しそうな空気をまとい、風が舞う。
湿り気を帯びた空気を含んで膨らむスカートを抑えながら、あかねは戦いを凝視する。
稲光と共に相対した二人が、互いをすり抜け止まった。
衆人観衆が息を呑む中、ぐらりと倒れたのは九能。
「……くっ、無念」
膝をつく九能が見上げた校長の姿は、幼き頃の父の姿。仰ぐほどの大きな背中──
振り返った父が、手を差し出す。
「タッチィ……、大きくなりまーしたね」
ほころんだ口元。伸ばされた手を取ろうとした時、九能の手をかすめてその色黒の手が揺らぐ。
ぐらりと傾いだ身体が、校庭に倒れた。
相打ち。
おお、と驚愕の声が轟く中で、九能は父の手を取る。
「ミーが、間違えてました……」
「ダ、ダディ!」
「もうタッチィは、小さな子供ではないのでーすね」
感動の親子の和解。
いつの間にやら周りを囲み、しんみりと見守る一同であったが、次の言葉でその微笑が固まった。
「わかーりました。ミーの留守中、マイホームのことを頼みまーす」
留守中?
「おい、ちょっと待て。おまえ、家族連れてハワイに行っちまうんじゃなかったのか?」
「WHY? たしかにハワイには研修に行きまーすが、ワンウィーク、一週間で戻りまーす」
「安心してくれ、おさげの女。一週間という長い月日をおまえに会えず過ごす心配ももうなくなったのだ」
引きつり顔のらんまの手を取り、九能が微笑む。そして隣のあかねに「天道あかね。そう心配せずとも君への愛は変わらないぞ」
「おねーちゃん、どういうことよ!」
「話が違うじゃねえか」
「あら、あたし、校長が一生帰ってこないなんて言ったっけ?」
「…………!」
「あたしはただ、勝手にハワイに行くことを決められて怒ってるって話を九能ちゃんから聞いただけよ」
移住なんて思い込んだのはあんた達の勝手よね──と言いながら、なびきの手の中で何枚かの紙幣が束を作っている。重なって音を立てるコインを大事そうにポケットに仕舞い、微笑んだ。
「上がりの二割程度だけど、バカには出来ないもんよね」
「HAHAHAHAHA! ハワイから戻った暁には、グレイトなハイスクールにするため、ミーは今まで以上に全力を尽くしまーす」
復活した校長がスキップを踏み、らんまの肩を抱きながら九能が快活に笑う。
脱力した一同は、一気にどしゃり校庭に沈んだ──
終幕
翌朝。
「はっはっは、おさげの女。約束通り、デートをするぞ」
「一人で南の島まで行ってこーい!」
朝から朗らかな笑い声を響かせた九能帯刀17歳は、通学路沿いの川に蹴り飛ばされる。
そう深くはない川に落ち、どぼん、と音を立てた。
原作にないような展開なり描写なりをやることに抵抗があったんですが、それじゃ出来ることの幅が狭まるなーと思い、打開の一歩としてやってみたのがこの話。
故にこれっぽっちも乱あじゃありません。もう思いっきりそんなテイストありません。
やりたかったことは、校長の「OUCH」と九能ちゃんの「変態校長」
ノリとしては初期の頃にあるドタバタ学園コメディっぽさというか。生徒が皆でワイワイ騒いでるよーな、そういうやつが好きなんです。うる星やつらっぽいノリ。
【2003.10.24】